
これまで2回にわたり建設業許可制度の概要や種類につき説明してきました。
「建設業許可ってなぜ必要なの?許可が必要なケースって?詳しく解説します。」
「建設業許可ってどこに申請すればいいの?一般建設業と特定建設業の違いって?詳しく解説します。」
今回は、一般建設業の許可取得に必要な要件のうち、前提及び経営業務の管理責任者等について説明します。
かつては、建設業許可の取得には「経管(けいかん)」が重要と言われていましたが、現在は「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」に名称が改められています。
なので、新たな名称とともに、どのような要件を満たせばなることができるかの理解が必要です。
なお、申請の際は、許可を得るための要件を満たしていることを客観的に証明できる資料等が必要で。
「自分は〇〇の要件を満たす△△経験を有している」という事実があっても、それを証明できる書類がなければ許可取得に時間を要したり、最悪の場合は取得できなかったりということもありますのでご注意ください。
1.一般建設業許可取得の5大要件
一般建設業許可を取得するには、次の5大要件を満たすことが求められます。
① 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)を置いている。
② 営業所技術者を営業所ごとに置いている。
③ 誠実性を有している。
④ 財産的基礎又は金銭的信用を有している。
⑤ 欠格要件に該当しない。
また、その前提として、社会保険や営業所についても一定のものが求められています。
今回は、前提要件及び①につき詳しく説明します。
2.前提要件とは
⑴社会保険への加入
かつての建設業界、特に下請の中小企業では、社会保険未加入のことが多く、社会的に問題となっていました。そして、そのことが若年層の建設業界離れを招いているという批判も強くありました。
そこで、2020(令和2)年10月の建設業法改正により、社会保険の加入が必須となりました。それにより、社会保険未加入業者は許可を取得できなくなっただけでなく、すでに許可を受けていた業者も、未加入のままでは許可更新を受けられなくなりました。
加入が求められる社会保険は以下の通りです。

法人では、人数にかかわらず設立時から全ての社会保険に加入義務があります。
個人事業主では、常時雇用する従業員が5人以上だと全ての社会保険に加入義務があります。ただし、常時雇用する従業員が4人未満であっても、雇用保険・労災保険は加入義務があります。
社会保険の加入要件等は複雑なため、必ず公的機関(ハローワーク・労働基準監督署・年金事務所等)や社会保険労務士にご相談ください。
(行政書士は基本的に対応できません。)
⑵要件を満たす営業所の設置
建設業許可取得に際しては、一定の要件を満たす営業所を設置する必要があります。
「営業所」の定義については、以下をご参照ください。
「建設業許可ってどこに申請すればいいの?一般建設業と特定建設業の違いって?詳しく解説します。」
この営業所では、請負契約の締結に係る実体的な行為を行っていることに加え、以下の要件を満たすことが求められています。
〇 独立性の確保(他社・居住スペースと明確に区分)
〇 事務什器・電話等の設置
〇 適正な使用権原
〇 外から確認できる看板等の設置
申請の際はこれらの要件を証明する書類・写真等の添付が必要ですが、許可権者(国土交通大臣・都道府県知事)により求められる要件が若干異なるため、申請前の確認が必須となります。
3.常勤役員等(経営業務の管理責任者等)とは
⑴求められる趣旨
これまでも説明してきたとおり、建設業には「受注生産」「長納期かつ天候の影響を受けやすい」「様々な作業員が同時に働く労働集約型産業」といった特性があります。
加えて、元請から下請(数次)に至るピラミッド型構造のため、適切なマネジメントが行われないと連鎖倒産につながります。
そこで、適正な経営を確保すべく、建設業法では「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」として、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」を置くことを求めています。
そして、「経営のプロ」としての役割が求められるため、国土交通省令(建設業法施行規則)において厳しい要件が定められています。
かつては、「経営業務の管理責任者(経管)」として、主たる営業所に常勤する役員の中から十分な経験等を有する者を選任することが求められていました。
ただ、「経験」と「役職」という二つの要件を満たすことは非常に難しく、そのために建設業許可を取得できないというケースが相次いでいました。
そこで、2020(令和2)年10月の建設業法改正で、「経営業務の管理能力は、個人ではなく組織として備えていればよい」という趣旨から、複数の者の経験による「チーム制」の要件が定められ、名称も「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」に改められました。
⑵役職・専任要件
「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」として認められる前提として、法人だと役員等のうち主たる営業所において常勤である者の一人が、個人事業者だと本人又はその支配人である者の一人が、各要件を満たす必要があります。
ここでいう「役員等」とは、株式会社の場合は取締役であり、執行役員・監査役・事務局長等は基本的に含まれません。
ただし、
・ 取締役に準ずる地位において、
・ 建設業の経営業務全般の執行に関し、
・ 取締役会(株主総会)の決議を経て、
・ 権限移譲された
執行役員等であれば含まれるとされています。
「主たる営業所に常勤」が求められることから、他法令により専任性を要求されるもの(宅地建物取引士・管理建築士等)との兼任は、同一営業所で登録される場合のみ認められます。
例えば、ある会社の本社で不動産業、支店で建設業を営んでいる場合、本社の宅地建物取引士として登録されている常勤役員は、支店の「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」として登録することはできません。他方、本社が新たに建設業も営む場合であれば、本社の「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」として登録することも可能になります。
また、常勤が要求される以上、他建設業者の「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」を兼任することは認められません。
なお、申請の際は、「常勤性」を証明するために社会保険加入関連書類等を添付する必要があります。加えて、自宅から営業所まで距離がある場合は、通勤していることを証明する書類(通勤定期券の写し等)が必要となることがあります。
また、「建設業許可を取得するために、名目だけの取締役とする」ことを防止する趣旨から、一定以上の報酬額であることが求められます。
⑶個人で要件を満たすには
(チーム制でなく)個人で「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」となるには、主たる営業所における常勤役員等の一人が以下のいずれかに該当する必要があります。

①はもっとも典型的な要件であり、建設業の役員経験が5年以上あるような人が対象となります。
かつては、「建設業であっても、申請業種と別業種の役員経験ならば6年以上必要」といった制約がありましたが、現在は業種を問わず5年以上とされています。
②については、3⑵の役員等に含まれる条件と同様、「取締役に準ずる地位において、建設業の経営業務全般の執行に関し、取締役会(株主総会)の決議を経て権限移譲された」執行役員等が該当します。
ただし、申請の際は、取締役に準ずる地位であることや正当な手続により権限移譲されたことを立証するために、組織図・定款・社内規程・取締役会(株主総会)議事録等の添付が必要となります。
③は一見ハードルが低そうに見えますが、「経営業務の管理責任者を補助する業務」は地位や業務経験により厳格に判断されます。
一般企業でこの要件を活用することは稀であり、家族経営の会社で代表取締役急死後に家族が急遽引き継ぐようなケースで活用されます。
⑷チーム制で要件を満たすには
3⑶の要件を満たすことができる常勤役員等がいない場合、複数者からなるチームで一定の要件を満たすことで「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」と認められます。
この場合、まずチームリーダーの立場となる常勤役員等を選定します。
ここでいう常勤役員等は、3⑵で説明した通り、株式会社であれば「取締役又は正当な手続を経て権限移譲された執行役員等」となります。
そして、その人が以下のいずれかの要件を満たすことが必要です。

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①における「財務管理・労務管理・業務運営の業務」が具体的に何を指すかについては、補佐者の説明をご参照ください。
次に、チームリーダーの補佐者として以下の要件を満たす者をすべて配置します。

この補佐者はそれぞれ兼務することもできますが、「当該常勤役員等を直接に補佐する者」としての配置が要求されているため、組織上直属直下の地位にあることが条件です。
なので、部長・課長といった役職者を飛び越えて平社員を役員の補佐者とすることや、立場を逆転させて役員を執行役員の補佐者とするようなことはできません。
なお、これらの補佐者に要求される業務経験は、申請する会社において経験したものに限られます。
なので、過去に建設業を営んだことのない会社は補佐者を選任することができないため、チーム制で要件を満たすことはできません。
今回は、一般建設業許可取得に必要な要件のうち、前提及び経営業務の管理責任者等について説明しました。
これまでの業務経験が必要な要件を満たしているかや、それを立証できるかの判断には、かなり膨大な書類の精査や作業が必要となります。
悩まれたときはぜひ専門家にご相談ください。
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