
国土交通省の発表によると、2026(令和)年3月末現在の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度から123業者増加しています。
許可増加数は近年増加傾向にあり、2019(平成31)年3月末と比べ約3.3%増加しています。
これはあくまで建設業許可を受けた業者数ですので、許可のない業者を含めると軽く50万を超えるのではないでしょうか。
そして、許可のない建設業者は許可取得を目指すのが一般的ですので、今後も許可業者数は増加していくことが見込まれます。
ところで、そもそも建設業にはなぜ許可制度が設けられているのでしょうか。
そして、どんなときに建設業許可を取得しないといけないのでしょうか。
そこで、今回は建設業許可制度の概要や許可が必要となるケースにつき、わかりやすく解説します。
1.建設業許可制度の法的根拠
建設業許可の法的根拠は1949(昭和24)年に制定された「建設業法」であり、以下のように目的が定められています。
(目的)
第1条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
つまり、建設業法は、「公共の福祉の増進」という最終目標を達成するために、以下の3つの目的を定めているといえます。
① 建設工事の適正な施工確保
② 発注者の保護
③ 建設業の健全な発展
このような目的が定められた背景には、建設業特有の事情があります。
一戸建ての自宅新築発注をイメージするとわかりやすいですが、建設業は典型的な受注産業であり、1件ごとに設計や仕様が異なります。そのため、発注者は完成品を事前に直接確認できないうえに、不適正な施工があっても完成後に修復することは困難です。
よって、建設工事の施工が適正に行われるよう確保する必要があります(①)。
また、建設工事はもともと長納期の上に天候の影響を受けやすいことに加え、多額の費用がかかるため、発注者に多くの負担を強いることとなります。
よって、発注者の保護を図る必要があります(②)。
さらに、建設業は設計者・建材業者・下請業者等を作業の種類や工程に応じて組み合わせて共同作業する総合産業です。そして、各業種の様々な技能をもった作業員が多数同時に働く労働集約型産業のため、これらを総合的にマネジメントする能力が必須です。
このように、建設業では多数のスキルを高いレベルで求められ、これを欠くと連鎖倒産にもつながるため、一定のルールを設けて健全な発展を促す必要があります(③)。
この3つの目的を達成するには、建設業者の資質(施工能力・財力等)向上や建設工事請負契約の適正化が不可欠なため、建設業許可制度が設けられました。
2.建設業許可が必要となるケース
このように、建設工事が適正に施工されるよう、建設業許可制度が設けられました。
他方、建設工事には様々な種類・規模があるため、どんな工事でも許可業者しか行えないとなるとスムーズな施工の支障となる可能性があります。
また、新規参入が阻害されるおそれが高くなることに加え、許可を出す役所の業務も膨大となりかねません。
そこで、建設業法では建設業許可が必要なケースにつき定めています。
⑴建設工事・建設業の定義
まず、建設工事・建設業につき以下のように定義しています。
(定義)
第2条 この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。
2 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
つまり、「同法別表第一に掲げる建設工事」の「完成を請け負う営業」を行うのが「建設業」です。
そして、別表第一には全29種類の建設工事が定められていますが、以下のようなものは含まれないため、これらを行うだけでは建設業に該当しません。
・ 建物の設計
・ 建設現場で用いるプレキャストコンクリートを工場で製造
・ 維持管理として行う除草・除雪作業
・ 工事現場の警備
つぎに、「完成を請け負う営業」中の「請負」については、民法で以下のように定めています。
(請負)
第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
つまり、請負とは「ある工事の完成に対して報酬を支払う契約」のことですが、一件の工事は様々な工程で構成されるため、「ある工程がどの程度まで進むと完成といえるか」といったことをすべて明らかにすることは困難です。
また、工事には発注者・元請・一次下請・二次下請・・・等様々な立場の人・業者が関与し、契約形態や内容も多岐にわたる以上、「契約書に請負と書いていないから、この工事は請負契約ではなく、建設業法の適用はない」といった言い訳が許されると、建設業法の目的が達成できません。
そこで、「工事の完成に対して報酬を支払う契約は、契約名義を問わず請負契約とみなす」と定められています。
(「みなす」なので、例外は許されません。)
以上より、「同法別表第一に掲げる建設工事の完成を請け負う営業」は、すべて建設業として扱われます。
なお、派遣契約に基づいて工事を行うのであれば、契約目的は仕事の完成ではなく労働力の提供であり、報酬も仕事の完成を問わず労働時間に対して支払われるため、請負には当たらず建設業には該当しません。
ただし、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第4条2号において、建設業務への労働者派遣は禁止されていますのでご注意ください。
⑵軽微な建設工事
建設業法では、建設業を営もうとする者、つまり「同法別表第一に掲げる建設工事の完成を請け負う営業を行おうとする者」に対し、事前の許可取得を義務付けています。
この許可取得は、個人・法人や元請・下請を問わず義務付けられています。
とはいえ、「どんな小さな工事であっても、許可業者しか行えない」となると、工事内容に応じた許可の有無確認のような様々な手間が生じる上に、何より業界が硬直化し新規参入が阻害されます。
そこで、「軽微な建設工事のみを請け負う者」として、以下の工事のみを行うのであれば、許可は不要としています。

なお、1件の工事を2以上の契約に分割したときは、全契約の合計額により軽微な建設工事に該当するかどうかが判断されます。
また、必要な材料を注文者が提供する工事では、材料の市場価格(または市場価格+運送費)を契約額に加えた額で判断されます。
なので、発注者が分割契約・材料提供等をすることで、許可を取得していない建設業者に発注することは認められません。
⑶建設業の種類
⑴で説明した通り、建設業法では全29種類(一式工事2種類・専門工事27種類)の建設工事を定めており、建設業許可も種類ごとに取らなければなりません。
このうち、一式工事2種類とは土木一式工事(土木工事業)と建築一式工事(建築工事業)のことであり、「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物/建築物を建設する工事であり、複数の専門工事を有機的に組み合わせるもの」を意味します。
具体的には、元請の立場で複数の下請業者を統括して施工する大規模・複雑な工事であり、大きなダムやタワーマンションの建設をイメージするとわかりやすいかと思います。
他方、専門工事27種類は大工工事・左官工事・電気工事・舗装工事・造園工事等、詳細に分類されており、許可を取得するには業種に応じた工事実績や技術者が必要になります。
なお、「一式工事」と「専門工事」は全くの別物であり、「一式工事の許可で、各専門工事をオールマイティーに行えるわけではない」ことに注意が必要です。
具体的には、一般的な建物建築の場合、建築工事業の許可を持つ元請業者が建築一式工事を受注し、各専門工事の許可を持つ下請業者を使って進められます。
ここでの元請業者の役割はオーケストラの指揮者のような「施工管理」なので、専門工事を自社施工する場合は、当該専門工事の許可も必要となります。
例えば、元請業者が塗装工事を自社施工する場合、その額が500万円以上であれば、建築工事業に加えて塗装工事業の許可も必要となります。
今回は、建設業許可制度の概要につき説明しました。
(さらに詳細な許可種別や必要要件は別の機会に説明します。)
建設業許可では、まず取得したい工事の種類を決めたうえで、様々な証明書類を準備して申請する必要があります。
別の種類の許可を取得する際は再び同じ作業が必要なうえに、毎年の報告事項や定期的な更新作業もありますので、悩まれたときはぜひ専門家にご相談ください。
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