「犯罪被害を受けたらどうしよう?被害届って、どうやって出せばいいの?詳しく解説します。」

「犯罪被害を受けたらどうしよう?被害届って、どうやって出せばいいの?詳しく解説します。」

 昨今、様々な犯罪に関するニュースがたくさん流れています。
 とくに、「トクリュウ」(匿名・流動型犯罪グループ)による犯罪は多岐にわたるうえに残忍なものが多く、ニュースを見るだけで強い怒りと恐怖を感じます。

 このような犯罪にあわないためには、何よりも防犯対策が必須です。
 現在は様々な防犯グッズ・資機材等がありますし、警察など公的機関による情報発信アプリ等もありますので、ニュースの情報などとあわせてぜひ活用してください。

 他方、今まさに犯罪にあいそうというときや、犯罪にあった直後などは、迷わずに110番してください。
 110番には躊躇があるかもしれませんが、悩んでいるうちにどんどん被害が拡大しかねませんので、とにかくすぐに電話してください。

 では、犯罪にあったことに後日気が付いたような場合は、どうすればいいのでしょうか。
 「被害届を出す」ことは知っていても、「被害届って何?」「どこに、どうやって出すの?」と聞かれてもなかなか答えられないのではないでしょうか。

 いざ被害届を出すとなったときに慌てないよう、被害届の性格や出し方から出した後の捜査等まで、元警察官がわかりやすく解説します。

1.被害届とは


⑴被害届の性質と警察受理後の流れ

 被害届とは、一般的に「犯罪の被害にあった人が、その事実を警察に申告する書類」とされており、警察組織内のルールである犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則2号)に以下のような定めがあります。

(被害届の受理)
第61条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

 そして、告訴・告発、職務質問、犯行の目撃等と並んで「捜査の端緒」とされており、被害届を受理した警察にとっては捜査を開始するきっかけとなります。
 ただし、明らかに捜査の必要がない(犯罪とならない)と判断されれば、捜査が行われないこともありますので、「犯罪である」ことが伝わるように被害届を出すことが大切です。

⑵告訴・告発との違い

 被害届とよく似たものに、「告訴・告発」があります。
 告訴・告発は、捜査の端緒という点では被害届と同じものの、
   〇 刑事訴訟法に明確に定められている。
   〇 犯人の処罰を求める明確な意思が必要。
   〇 警察に捜査義務が発生する。
   〇 特定の犯罪については、告訴がなければ捜査できない。
といった特徴があります。

 告訴・告発の詳細については、別の機会に改めて説明します。

⑶どんな事件・犯罪で出せるのか 

 「このような事件・犯罪の場合は被害届を出せない」といった定めはありませんので、たいていの場合は被害届で問題ありません。
 (ただし、告訴がなければ捜査できない犯罪については、被害届でなく告訴を求められることがあります)

2.被害届の出し方


⑴どんな準備をして、いつ出せばいいのか

 犯罪の被害にあってから何日以内に出せといった決まりはありません。
 ですが、時間が経過するほど証拠は失われ、犯人逮捕や被害回復が困難になっていきますので、できるだけ早く出すようにしてください。

 なお、被害届を出す際は、
   〇 運転免許証など身分証明ができるもの(被害者本人の届出であることを確認するため)
   〇 印鑑(被害届に押印するため)
以外は特に必要ありません。

 ただ、被害内容を警察官に正確に理解してもらうために、
   〇 詐欺事件であれば、契約書や振込記録
   〇 傷害事件であれば、診断書や患部を撮影した写真
   〇 窃盗事件であれば、被害品を特定できる資料(購入時の保証書・自転車の防犯登録番号等)
のように、手元にある証拠物を持参することを強くお勧めします。

 併せて、口頭で正確に説明できるよう、「事件の発端から現在までの経緯」「被害の具体的内容」「犯人の人定事項や特徴」などをメモに整理しておくとよいでしょう。

⑵どこに出せばいいのか

 警察の捜査権限は、事件が発生した場所を管轄する都道府県警にあるのが原則です。(発生地主義)
 なので、基本的には事件が発生した場所を管轄する警察署に被害届を出してください。
 ただ、発生場所が遠方の場合は、まず近くの警察署か警察相談ダイヤル(#9110で、都道府県警察の相談窓口につながります)に相談するのがよいでしょう。

 被害届は、簡単な内容(自転車盗難被害など)であれば交番・駐在所でも受け付けてくれます。
 ただ、交番・駐在所は不在がちなうえに、体制が限られているため事情聴取に時間を要する内容であれば警察署に行くよう案内されることが多いです。

 なので、最初から警察署に行くことをお勧めします。
 ただし、警察署も曜日・時間によって担当部署に人がいないこともあるので、事前に電話で確認すると確実です。

 なお、メール・郵送により被害届を出すこと自体は禁止されていません。
 ただし、メール・郵送だと以下のような問題がありますので、必ず警察署に行くようにしてください。
   〇 被害者本人による被害届かどうか、警察側で確認できない。
   〇 被害者・警察官で被害内容に齟齬が生じるおそれがある。
   〇 被害届を出した後の流れを警察官に確認できない。

⑶被害届を出す流れ

 ⑴⑵が終了すれば、基本的には被害を受けた本人が被害届を出しに行きます。
 なお、会社が被害を受けたような場合(事務所荒らし等)は、被害状況・被害額等をよくわかっている担当者等が出すことも可能です。
 ただし、被害者はあくまで会社の代表者(社長)になりますので、社長に関する情報(住居・氏名・年齢等)をわかるようにしておく必要があります。

 警察署では、質問に対して答えていけば、警察官が被害届を作成してくれます。
 その際は、⑴で準備したメモや証拠物をうまく活用してください。

 被害届ができると、警察官が内容を見せてくれるので(読み聞かせのこともあります)、間違いがなければ住居・氏名等を記入し、押印すれば終了です。
(内容に間違いがあるときは、必ずその場で申し立ててください)

 なお、保険金請求等で「被害届の受理番号」が必要となることもありますので、そのようなケースでは必ず確認してください。
(警察署によっては、後日でないと教えてもらえないこともあります)

⑷被害届の取り下げ

 和解や示談の成立等により、被害届を取り下げることも可能です。
 ただし、一度取り下げると、再び出そうとしても受理されにくくなるので、慎重な判断が必要です。
 また、被害届が取り下げられても、警察の捜査が継続されることがあることにもご注意ください。

3.被害届を出した後の流れ


⑴捜査開始

 被害届を出すと、その内容が警察内で精査されます。
 その結果、「事件性あり」と判断されると、捜査が開始されます。
 
 捜査は、関係者への事情聴取、事件現場の検証・実証見分・捜索、関係機関(役所・金融機関等)への照会、証拠物の鑑定等、様々な手法で行われます。

⑵逮捕から起訴まで

 捜査の結果、「逃亡・罪証隠滅のおそれあり」と判断されれば、犯人(被疑者)が逮捕されます。
 逮捕後は警察で取調べが行われ、送検が必要と判断されれば、逮捕後48時間以内に被疑者の身柄が検察に送られます。


 検察でも取調べが行われ、「引き続き拘束が必要」と判断されれば、送検後24時間以内に裁判所に対し勾留請求が行われます。
 請求が認められると10日間勾留され(最大20日間まで延長)、裁判が必要と検察が判断すれば、その期間内に起訴が行われます。

 なお、「逃亡・罪証隠滅のおそれ」がないときは、犯人(被疑者)在宅のまま一連の手続きが進められます。

 このように、被害届にはポイントがいくつもあります。


 被害届は警察で作成してくれるため、専門家が作成すべき性質のものではありませんが、被害届を出す際に不安があればぜひ専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

たかし