
近年、ネットショッピングをする機会がとても多くなりました。
特に、コロナ禍以降はほとんどすべてをネットショッピングで済ませる人も多くなったようです。
そして、ネットでは中古品も幅広く販売されています。
私も、かつては欲しい本があれば古書店、欲しいCDがあれば中古レコード店をそれぞれ何件も回って探していましたが、今ではネット検索するとあっという間に取り扱っているサイトを見つけることができ、価格の比較もできますので、本当に便利になったと思います。
また、自分の不要なものをフリマサイトやネットオークション等に出品した経験がある方も多いのではないでしょうか。
ところで、「古物営業許可」という言葉を耳にしたり、「〇〇県公安委員会許可 第××号 △△商」という表示を目にしたりしたことはないでしょうか。
一般的に古物営業というと、繁華街やロードサイドにある古書店や古着店をイメージすることが多いと思いますが、ネット上の中古品販売サイトもれっきとした古物営業であり、サイトのどこかに小さく公安委員会の許可番号も記載されています。
では、そもそも「古物営業許可」ってどんなときに必要なのでしょうか。
そして、フリマサイトやネットオークションに出品する際に、この許可を受ける必要はないのでしょうか。
今回は、古物営業許可制度の趣旨や、許可が必要となるケースについて説明します。
1.なぜ古物営業は許可制なのか
わが国においては、憲法22条1項で「職業選択の自由」が保障されており、それには自己の選択した職業を遂行する自由、つまり「営業の自由」も含まれると解されています。
ただし、同条では「公共の福祉に反しない限り」とされていることから、何らかの理由があれば営業の自由を制限することが認められます。
これを受け、法令により様々な業種で営業許可制度が設けられていますが、その理由・目的は業種によって様々です。
例えば、別記事で説明した建設業であれば、建設業特有の事情(受注産業・多額の費用・労働集約型産業等)を背景に、「建設工事の適正な施工確保」「発注者の保護」「建設業の健全な発展」という目的を達成すべく、建設業法に基づき許可制が取られています。
「建設業許可ってなぜ必要なの?許可が必要なケースって?詳しく解説します。」
また、食品関係営業であれば、「飲食に起因する衛生上の危害発生防止」「国民の健康の保護」という目的を達成すべく、食品衛生法に基づき許可制が取られています。そして、食中毒のリスクや営業実態等に応じて、業種(飲食店営業・菓子製造業・食肉販売業等)ごとに詳細な施設基準が設けられています。
このように、建設業や食品関係営業の許可制は、その理由がイメージしやすいでしょう。
他方、古物営業で許可制度が取られる理由は、なかなか思い浮かばないのではないでしょうか。
この点、古物営業法では以下のとおり定められています。
第1条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
つまり、古物営業においては、「盗品等の売買の防止・速やかな発見等」を図り、「窃盗等の犯罪の防止」「被害の迅速な回復」を目的として、許可制が取られています。
昔から、窃盗犯は盗んだ品物を古物店等で換金してきました。その結果として、古物店等で売買される古物には犯罪被害品が含まれる可能性があり、野放しにすれば犯罪被害品の流通が促進され、ひいては犯罪を助長するおそれがあります。
そのため、古物営業を行うには許可が必要であり、許可取得後に事業を行うに際しても様々な義務が課されています。
2.「古物」とは
⑴「古物」の定義
では、「古物」とは具体的に何を指すのでしょうか。
古物営業法では以下の3種類を「古物」と定義しています。
① 一度使用された物品
読み終わった本(=古本)、何度か着た服(=古着)、何年も乗った自動車(=中古車)など、本来の用途に従って使用された物品のことです。
一般的に「古物」としてイメージされる物はこれに該当します。
② 使用されていないが、使用のために取引された物品
自分か他人が使用するために取引された物は、未使用であっても古物とされます。
いわゆる「新古品」であり、未着用の服や未使用の切手などが該当します。
③ ①②に幾分の手入れをした物品
本来の性質・用途等を変えない範囲で補修等を行ったものも古物とされます。
例えば、修理した家電製品や、ほつれを繕った衣類などが該当します。
⑵古物13品目とは
古物に該当する物品の種類は、古物営業法施行規則にて13品目に分類されています。

この13品目に含まれ、上記①②③のいずれかに該当すれば、古物営業法上の「古物」となります。
ただし、具体例に記載のように、自動車のタイヤ・自転車の空気入れ等、本来的用法として自動車等の一部として使用される物品も含まれます。また、事務機器類・機械工具類・道具類等には幅広い物品が含まれるため、文言上はほとんどの物品が13品目のいずれかに該当するように見えます。
他方、古物営業法の目的は、あくまで「盗品等の売買の防止・速やかな発見等」を図り、「窃盗等の犯罪を防止」することです。
なので、盗難される可能性が低い物品や、盗難されても容易に発見できる物品は古物に該当しないとされています。また、使用すると消費される物品や、本質的な変化を加えられた物品等も古物には該当しません。
具体的には、以下のようなものが古物営業法上の古物から除外されています。

3.「古物営業」とは
⑴「古物営業」の3類型
古物営業法では、古物営業を以下の3つに分類しています。
① 古物商(1号営業)
古物の売買・交換や、委託を受けて売買・交換する営業をいい、一般的な古本屋やリサイクルショップのイメージです。
ただし、「古物の買取りを行わず売却だけ行う営業」や、「自身が売却した物品を買い戻すことのみ行う営業」は除外されています。
② 古物市場主(2号営業)
古物商間の古物売買・交換のための市場を経営する営業をいいます。
あくまで古物商だけが入店・参加できる市場のみが対象のため、フリーマーケットのような不特定多数に開かれた市場の経営は該当しません。
③ 古物競りあっせん業(3号営業)
古物の売買をしようとする者のあっせんを、インターネット上の競りの方法で行う営業をいいます。
いわゆる「ネットオークション業者」はこれに該当します。
⑵古物営業許可が必要なケース
上記①②③を「業として」行う場合には、古物営業許可の取得が必要となります。
「業として」とは、利益を出そうという意思があり、ある程度継続して行われることを意味します。
ただし、「利益を出そうという意思の有無」は、本人の主観ではなく客観的に判断されます。
例えば、家にある不要品をフリーマーケットに一度出品するだけならば「業」とは認められにくい一方、他のフリーマーケットで購入した物品を継続的にフリーマーケットに出品すれば「業」と認められる可能性が非常に高くなります。
一般的には、以下のようなケースだと古物営業許可は不要とされています。
①自分の物を売る。
②ネットオークションに自分の物を出品する。
③タダでもらった物を売る。
④自分が売った相手から、売った物を買い戻す。
⑤自分が海外で買ってきた物を国内で売る。
⑥小売店で購入した新品を転売する。
ただし、これらの場合でも、利益を出そうとする意思や継続性があると客観的に判断されれば、許可が必要とされることがあります。
⑶フリマアプリやネットオークションでも許可は必要か
以下、これまで説明してきた考え方に照らし、各ケースでの古物営業許可の要否を整理します。
① フリマアプリ
自分で使っていた物を出品するだけであれば、基本的に許可は不要です。
ただし、フリマアプリの活用により転売目的で中古品を購入し、出品する行為(いわゆる「せどり」行為)を継続的に行うときは許可が必要となります。
なお、ハンドメイド品は基本的に古物に該当しないため、許可は不要です。
ただし、中古の材料やアンティーク品を加工したハンドメイド品をフリマアプリに継続的に出品するようなケースでは許可が必要となります。
② ネットオークション
自分が使っていた物をネットオークションに出品したり、自分で使う物をネットオークションで落札したりする行為であれば、基本的に許可は不要です。
ただし、フリマアプリ同様、転売目的で落札した商品を高値で出品する行為を継続的に行うときは許可が必要となります。
なお、ネットオークションサイトの経営は「古物競りあっせん業」に該当します。
⑷新品・未開封品の転売でも古物営業許可が必要なケース
メーカーから直接仕入れたり、小売店から直接購入したりした新品を未開封のまま転売するときは、古物営業許可は不要です。
というのは、正規ルートで入手した新品には犯罪被害品が含まれるおそれが基本的にはないことから、古物に該当しないためです。
ただし、転売禁止を内容とする契約で購入した物品であれば、転売すると契約違反として責任を追及される可能性がありますので、古物営業とは別の注意が必要です。
他方、2⑴②で説明した通り、使用のために取引された物品は未使用でも古物(新古品)となります。
よって、一般個人から仕入れたり、フリマアプリ・ネットオークション等で購入したりした物品は、新品未開封であっても入手した段階で古物となりますので、継続的に販売するときは古物営業許可が必要です。
今回は、古物営業許可制度の趣旨や、許可が必要となるケースにつき説明しました。
新品未開封でも古物となるケースがあるように、古物かどうかは見た目だけでは判断できません。
また、利益を出そうという意思や継続性の有無は客観的に判断されるため、本人にその意識がなくても無許可営業を行ってしまう可能性があります。
悩まれたときはぜひ専門家にご相談ください。
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